持物で見分ける

持物(じもつ)とは、仏が手に持つ道具のことです。持物には、それぞれの仏が持つ役割や誓いが象徴されており、印相とあわせて仏を見分ける重要な手がかりになります。

剣と経典:智慧で迷いを断つ

剣と経典は、智慧で迷いを断ち切り、教えを授けることを象徴する持物です。

蓮華:清浄な悟りの境地

蓮華(れんげ)は、清浄な悟りの境地を表す持物で、観音菩薩などに見られます。泥の中から美しい花を咲かせる蓮の姿が、迷いの世界の中で悟りを開くことになぞらえられています。

水瓶:渇きを潤す清らかな水

水瓶(すいびょう)は、清らかな水で人々の渇きを潤すことを象徴する持物で、観音菩薩などに見られます。

宝珠:願いをかなえる珠

宝珠(ほうじゅ)は、願いをかなえる珠とされ、人々に恵みを与えることを象徴します。地蔵菩薩などが手にします。

錫杖:地獄の衆生を救う

錫杖(しゃくじょう)は、杖の頭についた輪が音を立てて、修行者の来訪を知らせる道具です。地蔵菩薩の持物として知られ、地獄に落ちた衆生をも救うという地蔵菩薩の誓いを象徴します。

薬壺:病を癒す薬

薬壺(やっこ)は、病を癒す薬を納める壺です。薬師如来が左手に持つことで知られ、他の如来との見分けの決定打になります。

千手観音の千の手と持物

観音菩薩の変化身のひとつである千手観音は、名前のとおり多くの手を持ち、それぞれの手に異なる持物を持つ、あるいは異なる印相を結ぶ姿で表されます。実際に千本すべてを彫刻することは難しいため、42本の手で千手を象徴的に表す作例が多く見られます。ひとつひとつの手が異なる持物を持つのは、あらゆる方法・あらゆる手段で人々を救おうとする誓いを、視覚的に表現したものとされています。持物の種類は仏によって決まっているとはいえ、千手観音のように多くの持物を同時に見せる例もあることを知っておくと、見分けの幅が広がります。

持物が失われているときの見分け方

持物は木や金属でできた別部材として手に取り付けられていることが多く、長い年月のあいだに欠損したり、後世の修理で失われたりすることが珍しくありません。持物が確認できない場合は、髪型・装身具・印相など、ほかの手がかりと組み合わせて判断する必要があります。博物館の展示解説や図録には、当初どのような持物を持っていたと考えられるかが記されていることが多く、あわせて確認すると理解が深まります。

持物は、仏像の彫刻や絵画で失われていることもありますが、残っている場合はもっとも確実な見分けの手がかりのひとつです。次の記事では、初学者がよく混同してしまうポイントを整理します。