三尊形式で見分ける:脇侍から中尊を当てる
お堂の中で、中央の仏(中尊・ちゅうそん)の両脇に、ひとまわり小さな仏が控えているのを見たことはありませんか。この組み合わせを三尊形式(さんぞんけいしき)といい、脇に控える仏(脇侍・きょうじ)の姿から、中央の仏が何であるかを見分けられることが多くあります。中尊が正面を向いた坐像で細部が確認しにくいときでも、脇侍は動きのある立像であることが多く、こちらの方が見分けやすい場合があります。
阿弥陀三尊:観音菩薩と勢至菩薩
阿弥陀如来を中尊とする阿弥陀三尊では、観音菩薩と勢至菩薩(せいしぼさつ)が脇侍を務めます。両者はよく似た姿をしていますが、頭上の宝冠の意匠で見分けられます。観音菩薩は宝冠の正面に、小さな阿弥陀如来の姿(化仏・けぶつ)をつけています。勢至菩薩は同じ位置に、水瓶(すいびょう)をつけています。中尊の脇に、化仏の宝冠をつけた菩薩と水瓶の宝冠をつけた菩薩が並んでいれば、中尊は阿弥陀如来と判定できます。
薬師三尊:日光菩薩と月光菩薩
薬師如来を中尊とする薬師三尊では、日光菩薩(にっこうぼさつ)と月光菩薩(がっこうぼさつ)が脇侍を務めます。両者は姿がよく似ており、冠や持物に太陽(日輪)と月(月輪)の意匠をつけて区別しますが、この違いは離れた場所からは分かりにくいことがあります。もっとも確実な決め手は、中尊が左手に薬壺を持っているかどうかです。日光・月光菩薩を伴う三尊で、中尊が薬壺を持っていれば、薬師三尊と判定できます。
三尊形式の見分けが役立つ場面
三尊形式の見分け方は、中尊の印相や持物が、後世の修理や本尊としての扱いの違いによって判別しにくくなっている場合にも役立ちます。また、阿弥陀三尊と薬師三尊はどちらも如来を中尊としますが、脇侍の組み合わせがまったく異なるため、中尊単独では判断に迷う場面でも、脇侍を確認するだけで如来の種類を絞り込めます。
例外もある:法隆寺金堂の釈迦三尊像
三尊形式のすべてが、阿弥陀三尊・薬師三尊のように定型化されているわけではありません。国宝・法隆寺金堂の釈迦三尊像は、寺伝で脇侍を薬王菩薩(やくおうぼさつ)・薬上菩薩(やくじょうぼさつ)と伝えていますが、これは釈迦如来の脇侍としては他に例がないほど珍しい組み合わせとされています。三尊形式は中尊を見分ける強力な手がかりですが、すべての如来に決まった脇侍の型があるわけではなく、釈迦如来のように、寺や像ごとに異なる場合もあることを知っておくと、思い込みによる誤判定を避けられます。