名物・食
扇屋の玉子焼き:慶安元年創業、落語の舞台になった老舗
寛政11年(1799)開業と伝わる王子稲荷門前の料理屋。いまも玉子焼きの味を伝えています。
江戸の名高い料理屋だった扇屋
王子稲荷神社の門前にある「扇屋」は、北区飛鳥山博物館の解説で、海老屋とともに寛政11年(1799年)の開業と伝えられる料理屋です。文化・文政期(19世紀前半)には江戸の料理屋番付にも上位で登場する有名店で、歌川広重の錦絵にも描かれました。
錦絵に添えられた句「扇屋へ 馴染になつた 三の午」は、初午・二の午・三の午と王子稲荷に参詣するたびに足を運んで、ようやく馴染みになれたという意味で、贔屓客の多い人気店だったことがうかがえます。海老屋は明治中頃に姿を消しましたが、扇屋は今も昔ながらの玉子焼きの味を伝えています。
店自身は慶安元年(1648年)の創業と案内していますが、この年は北区の資料では確認できていないため、本記事では開業の年を寛政11年と伝わる説で扱います。
落語「王子の狐」の舞台
扇屋を舞台にした落語「王子の狐」は、若い娘に化けた狐を見かけた男が、逆に狐をだまそうと扇屋へ誘い込み、飲み食いさせて寝入ったところへ、土産の玉子焼きだけ持って立ち去るという滑稽噺です。史実の逸話ではなく創作の落語ですが、扇屋という店の存在自体は実在した老舗であり、現在も玉子焼きの店として営業しています。
出典
- 北区飛鳥山博物館「【王子】江戸高名会亭尽 王子」(寛政11年開業の伝え・料理屋番付・広重の錦絵と句・今も玉子焼きを伝えることを確認。慶安元年創業の説は店の案内に拠り、北区の資料では未確認)