文化・文学・芸能

装束稲荷神社と、大晦日の狐火伝承

関八州の狐が集まったという伝説と、今も続く「狐の行列」。

狐が装束を整えたという榎

王子稲荷神社の近く、かつて「装束榎」と呼ばれる大きな榎があった場所に、装束稲荷神社(北区王子2丁目)が建てられている。伝承によれば、大晦日の夜、関八州(関東一円)の狐たちがこの榎の根元に集まって装束を整え、王子稲荷へ初詣に向かったとされる。集まった狐火の数で、翌年の豊凶を占ったとも伝わる。

この伝承の文献上の源流は寛永年間に制作された『若一王子縁起』絵巻とされ、門前へ参集する命婦(狐)の姿が描かれている。安政4年(1857年)には、歌川広重が「名所江戸百景」の一図として、この狐火の光景を描いている。装束榎そのものは明治以降の道路拡張で失われ、現在はその跡地に小さな祠が残るのみである。

平成に始まった「狐の行列」

この伝承にちなみ、平成5年(1993年)の大晦日から、「王子 狐の行列」という新しい年中行事が始まった。装束稲荷神社から王子稲荷神社まで約1kmを、和装に狐メイクをした参加者が練り歩く。先着順で参加者を募る、地域が新たに作り上げた伝統行事である。

装束稲荷神社の狐火伝承と、王子田楽(別記事)は、どちらも王子両社の周辺に育った民間信仰と芸能である。片や中世由来、片や江戸期の伝承と、時代の異なる二つの物語が、同じ土地に重なっている。

出典
  • 北区観光協会公式サイト「狐の行列」「王子装束えの木大晦日の狐火」
  • ColBase(国立文化財機構)所収の歌川広重「名所江戸百景」関連資料

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