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データの整理と要約

データを数値でとらえる基本手法を学びます。

このモジュールで学ぶこと 「クラス30人のテスト結果を一言で説明してほしい」と頼まれたとき、何を伝えますか?「平均50点」と言うだけでは、「全員が50点」なのか「0点と100点が半々」なのか区別できません。このモジュールでは、データの「中心」と「散らばり」を数値で正確に伝える方法(代表値・分散・四分位数)を学びます。 代表値:平均・中央値・最頻値 30人の身長データを「一つの数」で表すとしたら、どの値を選べばよいでしょうか?「合計を人数で割る」のが平均ですが、もし一人だけ身長2mの人がいたら平均は大きく引き上げられてしまいます。このような外れ値への耐性が、代表値の選択基準になります。 平均(mean)はすべての値を合計して個数で割ります。(エックスバー)と書き、 個のデータ に対して:
(シグマ)は「 から まで全部足す」という命令記号です。 の省略形です。外れ値が一つあるだけで値が大きく動く点に注意が必要です。 中央値(median)はデータを昇順に並べたときの「真ん中の値」です。個数が偶数のときは中央2値の平均をとります。外れ値があっても「順位」は変わらないため、外れ値の影響を受けません。 最頻値(mode)は最も多く登場する値で、カテゴリカルデータや離散データで特に有用です。 外れ値が疑われるときは中央値が安全。所得・価格など「一部の高額データ」を含む場合は中央値の方が実態を反映します。 散らばりの指標:分散と標準偏差 代表値でデータの「中心」はわかりました。しかし「全員が50点」と「0点と100点が半々」は同じ平均50点でも全く違います。データの「散らばり具合」を測るのが次の課題です。 最も単純な散らばりの指標は範囲(レンジ)(最大値から最小値を引いた値)ですが、外れ値一つに大きく左右されます。より安定した指標が分散と標準偏差です。 各データが平均からどれだけ離れているかを偏差 と呼びます。偏差の合計は必ず0になる(正負が打ち消し合う)ため、2乗して合計するのが分散の発想です:
で割るのは不偏分散にするためです。 個のデータから標本平均 を1つ推定した後、残差 が独立に変動できる個数は 個だけです(最後の1個は、他の 個の残差と「総和が0」という制約から自動的に決まります)。この を自由度といいます。 で割ることで母分散の過小評価が補正され、(不偏性)が成立します。 標準偏差 は分散の平方根なので元のデータと同じ単位(cm、点など)を持ち、直感的に解釈しやすいです。 不偏分散は 割り、標本分散は 割り。統計検定では特に断りがない限り不偏分散( 割り)が基本です。 外れ値に強い指標:四分位数とIQR 分散・標準偏差も外れ値の影響を受けます(2乗するのでむしろ増幅されます)。外れ値があるデータではより頑健な指標が必要です。データを小さい順に並べて4等分したときの区切り値を四分位数といいます。 100人のデータを昇順に並べた場合を想像してください: Q1(第1四分位数):25番目付近の値(下から25%の境界) Q2(第2四分位数):50番目付近の値(中央値に等しい) Q3(第3四分位数):75番目付近の値(下から75%の境界) 四分位範囲(IQR) は で求めます。中央50%のデータの散らばりを表すため、上下各25%の外れ値の影響を受けません。箱ひげ図はQ1・Q2・Q3・最小値・最大値を一図に表し、分布の形状を視覚的に把握できます。 より小さい値、または より大きい値が「外れ値候補」として識別されます。
IQR = Q₃ − Q₁ 最小値Q₁中央値Q₃最大値外れ値
箱ひげ図の読み方。箱の左端が Q₁、右端が Q₃ で、箱の長さが四分位範囲 IQR = Q₃−Q₁(中央50%の散らばり)。箱の中の線が中央値。ひげは Q₁−1.5×IQR / Q₃+1.5×IQR のフェンス内にある最小値・最大値まで伸び、その外側の点(赤)が外れ値候補として識別される。
IQR = Q3 − Q1。外れ値に頑健な散らばりの指標として試験頻出です。 分布の形を表す:歪度と尖度 四分位数と箱ひげ図で「全体の形の見当」はつきます。では分布の「歪み」や「とがり具合」を数値一つで表せないでしょうか?それが歪度と尖度です。 歪度(skewness、わいど)は分布の非対称性を表す指標です。所得分布のように少数の高額所得者が右側に伸びる分布は、平均が中央値より右に引っ張られます: 正の歪度(右に裾が長い)→ 平均 > 中央値 > 最頻値 負の歪度(左に裾が長い)→ 平均 < 中央値 < 最頻値 歪度 = 0 → 左右対称(正規分布など)
最頻値中央値平均 正の歪度(右に裾) 最頻値中央値平均 負の歪度(左に裾)
正の歪度(右に長い裾)では、裾に引っ張られる平均が最も右へ動き、最頻値<中央値<平均の順に並ぶ。負の歪度ではこの並びが左右反転し、平均<中央値<最頻値になる。「歪度の符号=平均が引っ張られる方向」と覚えると迷わない。
尖度(kurtosis)は分布の「裾の重さ(太さ)」を表します。正規分布を基準(尖度 = 0 または 3、定義によって異なる)として、裾が重い(つまり平均から大きく外れた値が出やすい)分布ほど高い尖度をとります。 歪度・尖度は試験で「方向感覚」を問われることが多い。具体的な数値計算よりも「正の歪度なら平均 > 中央値 > 最頻値」という方向性の理解が重要です。 格差の指標:ローレンツ曲線とジニ係数 分布の「散らばり」の特殊な形として、所得や資産の格差(不平等)を測る指標があります。「上位1%が富の50%を占める」というような不平等をどう数値化するか、それがローレンツ曲線とジニ係数です。 ローレンツ曲線(Lorenz curve)は横軸に「累積人口比率」、縦軸に「累積所得比率」をとった曲線です。全員の所得が完全に均等なら、人口10%が所得も10%を占めるため曲線は対角線(完全平等線)と一致します。実際には所得格差があるため曲線は対角線の下に垂れ下がります。垂れ下がりが大きいほど格差が大きくなります。 ジニ係数(Gini coefficient)はローレンツ曲線と完全平等線の間の面積 を使って格差を 0〜1 で表した指標です(完全平等線以下の三角形の面積は常に 0.5):
は完全平等(全員同じ所得)、 は完全不平等(1人がすべての所得を占める)を表します。日本のジニ係数は再分配後でおよそ0.37程度です。
所得(累積 %) 完全平等線Sローレンツ曲線人口(累積 %)
ローレンツ曲線は「累積人口比率(横)」に対する「累積所得比率(縦)」を描く。全員が同じ所得なら対角線(完全平等線)と一致し、格差があるほど曲線は下へ垂れ下がる。ジニ係数はこのすき間の面積 S の2倍(G = 2S)で、0 に近いほど平等・1 に近いほど不平等を表す。
ジニ係数:0に近いほど平等、1に近いほど不平等。ローレンツ曲線が対角線に近いほどジニ係数が小さい。試験ではローレンツ曲線の形状とジニ係数の大小関係が問われます。 よくある誤解・つまずき 平均は外れ値に弱い。 外れ値があるデータは中央値の方が「ふつうの値」を表します。 記述統計の分散は で割ります。 で割る不偏分散は母集団を推定する推測統計(後の章)の話。混同に注意。 標準偏差と分散は単位が違います。 分散は単位の二乗、標準偏差は元と同じ単位。 ここまでのまとめ 代表値:平均(外れ値に弱い)・中央値(頑健)・最頻値。右に歪んだ分布では「最頻値・中央値・平均」の順に大きくなる。 散らばり:分散・標準偏差・四分位範囲(IQR)。IQR は外れ値に頑健。 ジニ係数:0で完全平等、1に近いほど不平等。

確認クイズ(抜粋)

Q1. データ {2, 4, 4, 6, 14} の中央値はどれか。

A. 4

Q2. データ {1, 2, 3, 4, 100} において、外れ値の影響を最も受けにくい代表値はどれか。

A. 中央値

Q3. すべてのデータに定数 c を加えたとき、分散はどうなるか。

A. 変わらない

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