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ベイズの定理

条件付き確率とベイズの定理の仕組みを理解します。

このモジュールで学ぶこと 「PCR検査で陽性が出た——本当に感染しているのか?」感度99%の検査でも、有病率が低い集団では陽性の大半が「偽陽性」になることがあります。この逆転現象を理解するのがベイズの定理です。「原因 → 結果」の確率を逆向きに「結果 → 原因の確率」に変換する考え方を学びます。 全確率の公式:「複数の原因」から結果を計算する まず「順方向」の問いを解く準備をしましょう。製品の品質検査を例に考えます。工場Aが全生産の60%、工場Bが40%を担当し、不良品率はAが2%、Bが5%です。「無作為に選んだ1品が不良品である確率」はどう求めるでしょうか? 鍵は「原因(どの工場か)」ごとに結果の確率を計算し、原因の確率で加重平均することです。これが全確率の公式です。互いに排反で標本空間を分割する原因 に対して: 工場の例では (3.2%)となります。「各ルートの確率 × そのルートでの条件付き確率を足す」という構造を覚えてください。 全確率の公式は「原因で場合分けして足す」。ベイズの定理の分母そのものでもあります。 ベイズの定理:「結果」から「原因」の確率を逆算する 全確率の公式は「原因がわかっているとき結果の確率を求める」ものでした。では「結果がわかったとき、その原因は何か」を知りたいときはどうするでしょう?工場の例で「不良品が出た——これは工場Bからの製品である確率は?」という問いがこれに当たります。 これはまさに条件付き確率 の計算です。乗法定理と全確率の公式を組み合わせるとベイズの定理が得られます: 各用語の意味を整理します: :事前確率——結果Aを見る前の「原因 の確率」(工場Bの生産割合40%) :尤度(ゆうど)——原因 のもとで結果Aが起こる確率(工場Bの不良品率5%) :事後確率——結果Aを観測した後の「原因 の確率」 ベイズの定理の構造:事後確率 ∝ 尤度 × 事前確率。分母は全確率の公式で計算します。 医療検査への応用:感度・特異度・陽性適中率 ベイズの定理の最重要応用が医療検査の問題です。用語を整理します: 感度(sensitivity):疾患のある人が検査で陽性になる確率 特異度(specificity):疾患のない人が検査で陰性になる確率 有病率:集団中に疾患のある人の割合 陽性適中率(PPV):陽性だったとき実際に疾患がある確率 ベイズの定理をそのまま当てはめると: 感度90%・特異度95%でも有病率1%の集団では PPV ≈ 15%——陽性の85%は偽陽性です。有病率が低いと分母の偽陽性項が大きくなり、PPVは低下します。感度・特異度が高くても有病率次第でPPVが大きく変わることを「基本率の誤謬」と呼びます。 「検査で陽性 = 病気確定」ではない。PPVは感度・特異度だけでなく有病率にも大きく依存します。

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