データの代表値と尺度水準
平均・中央値・最頻値と、データの尺度水準(何の統計量が使えるか)を学びます。
ヒント:このモジュールで学ぶこと
「クラス30人の試験結果を集めました。何から読み取ればいいでしょうか?」データが手元に揃ったとき、最初にするべきことは「整理して要約する」ことです。平均・中央値・最頻値は、大量のデータを1個の数値に圧縮し、全体の特徴を素早く把握するための道具です。そして、どの代表値が使えるかは「データの種類」によって決まります。
1. 代表値:平均・中央値・最頻値
会社の年収データを例に考えてみましょう。10人の社員の年収が「300, 320, 340, 350, 360, 380, 390, 400, 420, 2000(万円)」だとします。最後の1人だけ突出して高い、いわゆる外れ値(他の値から極端に離れたデータ点)です。
このデータの代表値を3種類で計算すると:
- 平均(mean):全員の年収を足して人数で割る。外れ値2000万円に引っ張られ、平均は約426万円になり、実態より大幅に高くなります。
- 中央値(median):大小順に並べたときの真ん中の値。10人なら5番目と6番目の平均 = (360+380)/2 = 370万円。外れ値の影響をほとんど受けません。
- 最頻値(mode):最も多く現れる値。このデータでは全員異なるため意味をなしませんが、「血液型の分布」など、同じ値が繰り返し現れるデータで特に有効です。
| 代表値 | この年収の例での値 | 外れ値への強さ | 向いているデータ |
|---|---|---|---|
| 平均 | 約426万円(実態より高い) | 弱い(外れ値に引っぱられる) | 外れ値が少なく左右対称なデータ |
| 中央値 | 370万円(実感に近い) | 強い | 外れ値・歪みのあるデータ |
| 最頻値 | 全員異なり無意味 | 強い | カテゴリ・同じ値が繰り返すデータ |
この年収の例のように「ほとんどの値は低く、ごく一部の高い値が存在する」分布は右裾が長い(右歪みの)分布と呼ばれます。右歪みでは大きな外れ値が平均を右に引っ張るため、「最頻値 中央値 平均」の大小関係が成り立ちます。左右対称の分布(正規分布など)では三者が一致します。
個のデータ の平均は次の式で定義されます。
試験ポイント:外れ値がある場合は中央値、カテゴリデータには最頻値が適切です。「右裾が長い分布」では最頻値 中央値 平均の大小関係になる傾向があります(一般的な目安として、試験ではこの関係が成り立つ前提の問題が出題されます)。
2. データの種類と尺度水準:「何の統計量が使えるか」を決める
データ分析の最初の問いは「このデータにどんな統計量が使えるか?」です。それを決めるのがデータの尺度水準(level of measurement)です。
まず大きく2種類に分けられます。量的変数(quantitative)は数値で量を表し、四則演算が意味を持ちます(身長、体重、テスト点数など)。質的変数(qualitative / categorical)は数値でなくカテゴリを表し、四則演算は意味を持ちません(血液型、都道府県、性別など)。
量的・質的の中はさらに4段階の尺度水準に分類されます。
| 尺度水準 | 大小 | 間隔 | 比率(0=無) | 例 | 使える代表値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 名義尺度 | × | × | × | 血液型・都道府県 | 最頻値 |
| 順序尺度 | ○ | × | × | 満足度1〜5・順位 | +中央値 |
| 間隔尺度 | ○ | ○ | × | 摂氏温度・西暦年号 | +平均 |
| 比例尺度 | ○ | ○ | ○ | 身長・体重・金額 | すべて(+幾何平均) |
「使える代表値」は下ほど上を含みます(比例尺度は全部使える)。間隔尺度は0が「無」を意味しない(摂氏20℃は10℃の「2倍暖かい」ではない)ので比率は無意味。比例尺度は0が絶対的な無で、比率も意味を持ちます。
試験頻出パターン:「満足度5段階評価の平均を計算しました」これは順序尺度なので平均の計算は本来不適切です。試験では「この変数に平均が使えるか」という判断問題が頻出です。間隔尺度・比例尺度なら平均OK、名義・順序尺度なら中央値や最頻値が適切です。
よくある誤解・つまずき
- 平均はいつも「真ん中」ではありません。 外れ値や歪んだ分布では平均が中心からずれます。年収のように一部に大きな値があるデータは、中央値の方が「ふつうの人」を表します。
- 順序尺度(満足度5段階など)の平均は本来不適切です。 「1と2の差」と「4と5の差」が同じとは限らないため。中央値や最頻値を使います。
ここまでのまとめ
- 代表値:平均(外れ値に弱い)・中央値(外れ値に強い)・最頻値(カテゴリ向き)。右に歪んだ分布では 最頻値 中央値 平均。
- 尺度水準(名義・順序・間隔・比例)で、使える統計量(平均が使えるか等)が決まる。
- 次のモジュール「散らばりの指標と箱ひげ図」では、代表値だけでは分からないデータの広がり方を学びます。
確認クイズ(抜粋)
Q1. 代表値の説明として正しいのはどれか。
A. データ全体を一つの数値で代表させる値のこと
Q2. 次のうち量的変数(quantitative variable)はどれか。
A. クラス全員の身長(cm)
Q3. データ 3, 5, 7, 9, 11 の中央値はいくつか。
A. 7
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