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時系列データと変化の読み方

時系列グラフの読み方、移動平均、指数の基本を学びます。

ヒント:このモジュールで学ぶこと

「今月の売上は先月より10万円増えた。これは良いことか?」単純な増減だけでは判断できないことがあります。例えば12月は毎年売上が増える(季節変動)かもしれないし、長期的には下落トレンドかもしれません。時系列データとは「時間の順序を持つデータ」のことで、その読み方には通常のデータ分析とは異なる工夫が必要です。このモジュールでは、時系列グラフの読み取り、移動平均による平滑化、指数の使い方を学びます。


1. 時系列データとは:時間順序を持つデータ

時系列データとは、同一の対象について時間の経過とともに繰り返し測定したデータです。株価・気温・GDP・人口など、時間とともに変化する多くの現象が時系列データです。

時系列データの特徴:

  • 順序に意味がある:データは時間順に並んでおり、並べ替えると意味が失われる
  • 隣接する観測値が関連しやすい:昨日の気温と今日の気温には関連がある(系列相関)
  • 複数の変動成分が重なっている:長期的なトレンドに、季節変動や不規則変動が重なる

2. 時系列グラフの読み方:4つの変動成分

「12月だけ売上が高い」「毎年少しずつ伸びている」「コロナ禍で突然落ちた」時系列グラフにはこれらの異なる「動き」が同時に重なっています。原因が混在したまま全体のグラフを読もうとすると混乱します。そこで変動を原因ごとに「分解」して考えると整理しやすくなります。時系列データは以下の4つの成分に分解できます。

  • 趨勢変動(トレンド):長期的な増加・減少の傾向。「日本の人口は長期的に減少トレンドにある」
  • 季節変動:1年を周期として繰り返すパターン。「エアコンの売上は夏に増え冬に減る」「アイスクリームの消費は夏に高い」
  • 循環変動:数年単位で繰り返す景気サイクルのような変動(試験では季節変動ほど重視されない)
  • 不規則変動(残差):上記のどれでも説明できない、偶発的な変動

試験ポイント:「この折れ線グラフはどの変動を示しているか」という読み取り問題が頻出です。毎年同じ時期に同じ形のパターンが繰り返されていれば「季節変動」、長期的な方向性があれば「趨勢変動(トレンド)」と判断します。


3. 移動平均:変動の「ノイズ」を除去する

生データ(ノイズ) 移動平均=トレンド
生データ(灰)は短期のノイズで上下にぎざぎざ揺れて、長期の傾向が見えにくい。各点を「前後数点の平均」に置きかえる移動平均(色つき)を取ると、ノイズが打ち消し合ってなめらかになり、右肩上がりのトレンドがはっきり見える。

売上グラフを毎月プロットすると、月ごとの小さな上下が激しくてトレンドが見えない、という経験はないでしょうか。短期的な上下変動(ノイズ)の中に本来のトレンドが埋もれている状態です。これを平滑化(なめらかにすること)する手法が移動平均です。

移動平均の計算方法(奇数項の場合): 対象時点の前後を含む 個のデータの平均を、その中央の時点に割り当てます。これを中心化移動平均といいます。

例えば、月別売上データが「1月:10, 2月:12, 3月:8, 4月:14, 5月:11, 6月:13」のとき、3項移動平均(前後1期を含む3期間の平均)は:

  • 2月の移動平均:(1月・2月・3月の平均を2月に割り当て)
  • 3月の移動平均:(2月・3月・4月の平均を3月に割り当て)
  • 4月の移動平均:(3月・4月・5月の平均を4月に割り当て)
  • 5月の移動平均:(4月・5月・6月の平均を5月に割り当て)

移動平均の特徴:

  • 短期的な変動(ノイズ)が平滑化され、長期的なトレンドが見えやすくなる
  • の値(項数)が大きいほど平滑化の効果が強まる
  • 先頭と末尾の 個の時点は計算できない(前後のデータが揃わないため)

季節変動を除去したいときは、周期に合わせた項数を選びます(月次データなら12項移動平均で季節成分を打ち消せる)。


4. 指数:基準を100として変化を比較する

「今年の物価は5年前に比べて何%上がったか」のように、時系列の変化を比較しやすくする指標が指数です。

指数の計算: ある時点を基準時点(100とする)として、他の時点の値を基準に対する比率で表します。

例えば、2020年の物価水準を100とし、2024年の物価が2020年比で1.08倍(8%上昇)なら、2024年の物価指数は です。

身近な指数の例:

  • 消費者物価指数(CPI):家庭が購入する商品・サービスの物価水準の変化
  • 株価指数(日経225、TOPIXなど):株式市場全体の動きを1つの数値で表す

試験ポイント:指数の計算問題では「どの年が基準(=100)か」を確認することが最重要です。基準が変わると指数の値も変わります。


よくある誤解・つまずき

  • 単純な前月比の増減だけで判断しないこと。 「12月は毎年増える」のような季節変動を考慮しないと誤読します。
  • 移動平均は両端の数点が計算できません。 前後のデータが揃わないためグラフの端が欠けます。
  • 指数は「基準時点=100」が前提です。 基準を変えると同じデータでも指数の値が変わります。
  • トレンドと季節変動は別物。 長期の方向性がトレンド、1年周期の繰り返しが季節変動。

ここまでのまとめ

  • 時系列データは時間順のデータ。順序に意味があり、隣接する値が関連しやすい。
  • 4つの変動成分:趨勢(トレンド)・季節・循環・不規則。
  • 移動平均でノイズを平滑化(項数が大きいほど滑らか、両端は欠損)。
  • 指数は基準時点を100とした比率。基準の確認が最重要。

確認クイズ(抜粋)

Q1. 時系列データの説明として正しいのはどれか。

A. 同一の対象について時間の経過とともに繰り返し測定したデータ

Q2. 「エアコンの売上は毎年夏に増加し冬に減少するパターンが繰り返される」これは時系列データのどの変動成分か。

A. 季節変動

Q3. 「日本の総人口は長期的に減少し続けている」これは時系列データのどの変動成分か。

A. 趨勢変動(トレンド)

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