散布図・相関・クロス集計
散布図と相関係数で2変数の量的関係を、クロス集計表で質的変数の関係を分析します。
ヒント:このモジュールで学ぶこと
前のモジュールではヒストグラムや箱ひげ図で「1つの変数の分布」を見ました。では「2つの変数の関係」はどうやって可視化するのでしょうか。「勉強時間が長いほどテストの点は高いのか?」「性別によってコーヒーの好みに違いはあるか?」このような問いに答えるのがこのモジュールで学ぶツールです。
1. 散布図と相関係数:2変数の量的関係を見る
2つの量的変数の関係を視覚化するツールが散布図です。「広告費(X軸)と売上(Y軸)」「勉強時間(X軸)とテスト点数(Y軸)」のように、各データ点を平面上の1点として打ちます。
散布図から読み取れる関係の種類:
- 正の相関:右上がりの点の群。広告費が多いほど売上も多い。
- 負の相関:右下がりの点の群。気温が下がるほどコーヒーの販売量が増える。
- 無相関:点がランダムに散らばる。靴のサイズと英語の成績には関係がない。
共分散:2変数が同じ方向にずれるかを測る
散布図から読み取れる「関係の向き」を数値化する第一歩が共分散(covariance)です。 が平均 より大きいとき も平均 より大きければ「同じ方向にずれている」。このずれの積を全データで平均したものが共分散 です。
具体例で確かめる: 3人のデータで広告費 (万円)と売上 (万円)を考えます。、 とします。
- Aさん:(3, 30) ⇒ ズレ (−2, −10) ⇒ 積 +20
- Bさん:(5, 40) ⇒ ズレ ( 0, 0) ⇒ 積 0
- Cさん:(7, 50) ⇒ ズレ (+2, +10) ⇒ 積 +20
。広告費が高い人ほど売上も高い(正の方向に一緒にずれている)ことが数値で確認できます。
と が同じ方向にずれれば積は正、逆方向なら負になります。ただし共分散には「単位の影響を受ける」という欠点があります。cmとkgの共分散とcmと点数の共分散を比較しても意味がありません。そこで共分散を ・ それぞれの標準偏差の積で割り正規化したものが相関係数です。
この関係の強さを−1から1の数値で表したものがピアソン相関係数 です。
ここで (X の分散)、(Y の分散)です。 は X・Y それぞれの標準偏差の積になります。
分子は共分散の中心部分にあたります。 が平均より大きく も大きければ積は正、 が大きく が小さければ積は負になります。分母でそれぞれの「散らばりの大きさ」(標準偏差の積)を割ることで、単位・スケールに依存しない −1〜1 の無次元量に正規化しています。
なら「強い正の線形関係」、 なら「弱い正の関係」、 なら「強い負の関係」のように、 が1に近いほど関係が強いです。散布図で の場合は点が細い右上がりの帯に並び、 の場合は広がりのある右上がりの雲のような形になります。
相関 ≠ 因果:相関係数が高くても「原因と結果の関係がある」とは限りません。「アイスクリームの売上と溺死者数に正の相関がある」なぜでしょう?アイスが原因で溺死するわけではありません。夏の気温が高いとアイスもよく売れ、水遊びも増えて溺死者も増えます。つまり気温という第3の変数が両方に影響しているだけです。このように第3の変数が見かけ上の相関を作り出すことを疑似相関(擬相関)といいます。
2. クロス集計表(分割表):2変数の質的関係を整理する
散布図と相関係数は「身長と体重」のような量的変数(数値)2つの関係を見るツールでした。クロス集計表(分割表)は、「性別」「血液型」「合否」のような質的変数(カテゴリ変数)2つの関係を整理する表です。
「性別(男・女)とコーヒーの好み(好き・嫌い)」を100人に調査した結果を例に見ます。
- 男性(計50人):好き 30人、嫌い 20人
- 女性(計50人):好き 40人、嫌い 10人
- 全体(計100人):好き 70人、嫌い 30人
クロス集計表を読む際、「%」の計算方法は3種類あります。
- 行%(行合計に対する割合): 「男性の中で好きな人は 30/50 = 60%、女性では 40/50 = 80%」グループ内の構成比を比較するのに使う
- 列%(列合計に対する割合): 「コーヒーが好きな人の中で男性は 30/70 ≈ 43%、女性は 57%」特定の結果の中での属性比を見るのに使う
- 全体%(総計に対する割合): 「全体のうち男性でコーヒーが好きなのは 30/100 = 30%」
試験ポイント:「原因→結果」の方向で比べたいときは行%が基本です。「性別が原因で好みが結果」なら行%を使い「女性は男性より20ポイント多くコーヒーが好き」と読みます。
よくある誤解・つまずき
- 相関関係は因果関係ではありません。 相関が高くても「原因と結果」とは限らず、第3の要因(交絡)が見かけの相関を作ることがあります(アイスの売上と溺死者数=気温が共通原因)。
- **相関係数 は「直線的な関係」の強さだけを測ります。** きれいな曲線(U字など)の強い関係でも は0に近くなることがあります。必ず散布図も見ること。
- ** は「無関係」ではなく「直線関係がない」だけです。**
- 相関係数は外れ値に弱いです。 たった1つの極端な点で が大きく変わることがあります。
ここまでのまとめ
- 散布図:2つの量的変数の関係(正・負・無相関)を点で見る。まず形を確認。
- **相関係数 **:〜 で直線関係の強さと向きを表す無次元量。 が1に近いほど強い。
- クロス集計表:質的変数2つの関係を整理。行%・列%・全体%を目的で使い分ける(原因→結果は行%)。
- 相関 ≠ 因果:数値が強くても因果は別。散布図と背景の確認が必須。
確認クイズ(抜粋)
Q1. ピアソン相関係数 r の値域として正しいのはどれか。
A. -1 ≤ r ≤ 1
Q2. 相関係数 r = 0.9 の解釈として最も適切なのはどれか。
A. 2変数の間に強い正の線形関係がある
Q3. 相関係数 r = −0.8 の散布図の形として正しいのはどれか。
A. 右下がりの強い線形分布
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