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散らばりの指標と箱ひげ図

分散・標準偏差・偏差値・変動係数と、四分位数・箱ひげ図・外れ値の判定基準を学びます。

ヒント:このモジュールで学ぶこと

前のモジュールでは平均・中央値・最頻値という「代表値」を学びました。しかし代表値だけではわからないことがあります。「毎日25℃の夏」と「15℃と35℃が交互に来る夏」は平均気温が同じ25℃でも、体感はまったく異なります。この「散らばりの大きさ」を数値化する指標と、分布の形を5数で捉える箱ひげ図を学びます。


1. 分散と標準偏差:「散らばり」を数値化する

散らばりの最もシンプルな指標から始めましょう。最小値はデータの中で最も小さい値、最大値は最も大きい値です。そして 範囲(レンジ) = 最大値 − 最小値 は、データが全体としてどれだけの幅に広がっているかを1つの数値で表します。

例:「10, 25, 30, 45, 90」というデータなら範囲 = 90 − 10 = 80。ただし範囲は外れ値(極端な1点)に大きく左右されます。90が150になるだけで範囲は80から140に変わります。この弱点を補う指標として、次に分散・標準偏差・四分位範囲を学びます。

分散(variance)は「各データが平均からどれだけ離れているか」を1つの数値にまとめた指標です。式だけ見ると難しく感じますが、小さなデータで手を動かすと、なぜこの形なのかが見えてきます。

例として 6, 8, 10, 12, 14(平均は10)で考えます。まず各データと平均の差=偏差を出します。

平均 106−48−210012+214+4
各データと平均10との差が偏差(点の上の数)。平均より小さい側が負・大きい側が正で、左右にちょうど打ち消し合うため偏差の合計は0になる。だから二乗してから平均する——それが分散。
偏差(値 − 平均10)偏差²
6−416
8−24
1000
12+24
14+416
合計040

偏差をそのまま足すと、正と負が打ち消し合って必ず0になります(表の左下)。これでは散らばりを測れません。そこで偏差を二乗してから平均します。二乗すれば必ず0以上になり、打ち消しが起きません。これが分散です(記述統計では で割る)。

ただし二乗したぶん単位も二乗(気温なら℃²)になり、元の値と直接くらべられません。そこで平方根をとって元の単位に戻したものが標準偏差(standard deviation)です。

標準偏差は元のデータと同じ単位なので、「平均からおよそ の範囲に大半が散らばっている」と直感的に読めます。分散(単位の二乗)と標準偏差(元の単位)の違いは試験でよく問われます。

注(分母 $n$ と $n-1$ の違い):ここで学ぶ分散は「手元にあるデータ全体の散らばり(記述統計)」を表すもので、分母は です。Chapter 4(推測統計)では、母集団の分散を推定する「不偏分散」(分母が )を使います。なぜ なのかはChapter 4で詳しく学びます。今は「記述統計では で割る」と覚えておいてください。

偏差値は、異なるテスト間・異なる集団間で「相対的な順位」を比較するために生まれた指標です。例えば「A校の模試で80点」と「B校の模試で75点」を直接比べても、どちらのテストが難しかったかわからないので意味がありません。そこで、どちらも「平均50・標準偏差10」の共通の尺度に変換してしまえば、比較が可能になります。これが偏差値の発想です。

平均点の人の偏差値はちょうど50、平均より標準偏差1つ分高い人は60になります。「偏差値60」は「上位約16%」に相当し(正規分布を仮定した場合)、異なるテスト・異なる母集団間でも相対的な位置を比較できます。

試験ポイント:偏差値の計算式と、平均点の人の偏差値が50になる理由( なら式の第1項がゼロ)を押さえましょう。

「身長(cm)と体重(kg)ではどちらのばらつきが大きいか?」単純に標準偏差を比べても単位が違うので意味がありません。そこで登場するのが変動係数(CV: Coefficient of Variation)です。

標準偏差を平均で割ることで「平均に対するばらつきの割合」を表します。単位が消えるため、異なる単位・異なる規模のデータ間でばらつきを比較できます。

試験ポイント:「身長(平均170cm・標準偏差5cm)と体重(平均65kg・標準偏差8kg)ではどちらのばらつきが相対的に大きいか」単純に標準偏差だけで比べると体重が大きく見えますが、CV = 5/170 ≈ 2.9% vs 8/65 ≈ 12.3% なので体重の方が相対的なばらつきが大きいと判断できます。


2. 四分位数と箱ひげ図:分布の「形」を5数で捉える

平均と標準偏差だけでは分布の形状(歪みや外れ値の存在)が見えにくいことがあります。そこで登場するのが四分位数箱ひげ図です。

データを小さい順に並べて4等分したときの境界値を四分位数といいます。テスト点数「40, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95」(10人分)で考えましょう。

  • Q1(第1四分位数):下位25%の境界 → 約60点
  • Q2(第2四分位数):中央値(下位50%の境界)→ (70+75)/2 = 72.5点
  • Q3(第3四分位数):上位25%の境界 → 約85点

箱ひげ図は「最小値・Q1・Q2・Q3・最大値」の5つの数値(五数要約)を1枚の図で表します。箱の下端がQ1、上端がQ3、箱の中の横線がQ2(中央値)です。箱から上下に伸びる「ひげ」が最小値・最大値(または外れ値を除いた範囲)を示します。

IQR = Q₃ − Q₁ 最小値Q₁中央値Q₃最大値外れ値
箱ひげ図の読み方。箱の左端が Q₁、右端が Q₃ で、箱の長さが四分位範囲 IQR = Q₃−Q₁(中央50%の散らばり)。箱の中の線が中央値。ひげは外れ値を除いた最小値・最大値まで伸び、その外側の点(赤)が外れ値。平均と標準偏差では見えない「分布の形・外れ値」が一目でわかる。

四分位範囲(IQR: Interquartile Range) = Q3 − Q1 は、中央50%のデータがどれだけ広がっているかを表す散らばりの指標で、外れ値の影響をほとんど受けません。

外れ値の判定基準として最も広く使われるのがテューキー(Tukey)のルールです。次の範囲を超える値を外れ値とみなします。

先ほどの例(Q1=60, Q3=85, IQR=25)で計算すると、下限 = 60 − 1.5×25 = 22.5点、上限 = 85 + 1.5×25 = 122.5点となります。この範囲の外にある値を外れ値と判断し、箱ひげ図では「ひげ」の端を外れ値を除いた最小値・最大値に合わせ、外れ値は別に点(○)で表示します。

試験ポイント:「1.5×IQR」という係数は試験で直接問われます。 より小さい値、または より大きい値が外れ値です。


よくある誤解・つまずき

  • **記述統計の分散は で割ります。** で割る「不偏分散」は母集団を推定する推測統計(Chapter 4)の話です。ここで混同しないこと。
  • 分散と標準偏差は単位が違います。 分散は単位の二乗(℃²など)、標準偏差は元と同じ単位(℃)。「平均 標準偏差」で考えるのはこのためです。
  • IQR は外れ値の影響を受けにくい指標です。 範囲(最大値−最小値)は1点の外れ値で大きく変わりますが、IQR は中央50%だけを見るため安定しています。

ここまでのまとめ

  • 散らばり:範囲・分散・標準偏差・変動係数(CV)・四分位範囲(IQR)。
  • 偏差値 。平均点の人は必ず50。
  • 変動係数 。単位の異なる2つのデータ間でばらつきの大きさを比較するときに使う。
  • 外れ値の目安 より小、または より大。

確認クイズ(抜粋)

Q1. 平均60点・標準偏差10点のテストで80点だった人の偏差値はいくつか。

A. 70

Q2. 標準偏差の単位はもとのデータの単位と比べてどうか。

A. もとのデータと同じ単位

Q3. 四分位範囲(IQR)の説明として正しいのはどれか。

A. 第3四分位数から第1四分位数を引いた値

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