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離散型確率分布

確率変数・PMF・期待値・分散・一次変換・二項分布を基礎から積み上げて学びます。

ヒント:このモジュールで学ぶこと

前のChapterでは「確率とは何か」「条件付き確率と独立性」を学びました。確率とは「事象に割り当てた数値」でしたが、ここからは一歩進んで「試行の結果に数値を割り当てた変数」である確率変数を扱います。

「コインを2回投げたとき、表は何回出るか?」0回かもしれないし、1回かもしれないし、2回かもしれません。このように「試行前には決まっていないが、起こりうる値とその確率がわかる変数」を確率変数といいます。このモジュールでは確率変数の基本概念(PMF・期待値・分散)を学び、「成功か失敗かの試行を 回繰り返したとき、成功回数の分布はどうなるか」、つまり二項分布を理解します。


1. 確率変数と確率質量関数(PMF)

コインを2回投げる試行を考えます。表の回数 は 0, 1, 2 のいずれかです。このように「試行の結果によって値が決まる変数」を確率変数(random variable)といいます。

特に が 0, 1, 2 のような整数値(とびとびの値)しかとらない確率変数を離散型確率変数といいます。サイコロの目・コインを投げたときの表の回数・不良品の個数などが典型例です。

なお、身長や体重のように小数点以下の値も連続してとれる変数は「連続型確率変数」と呼び、次のモジュールで扱います。

各値が起こる確率を表にまとめると次のようになります。

  • 表が 0回:確率 1/4
  • 表が 1回:確率 1/2
  • 表が 2回:確率 1/4

なぜ なのか?表・裏(HT)と裏・表(TH)の2通りがあり、全体の組み合わせ(HH・HT・TH・TT)は4通りなので です。

この表が確率変数の「全貌」を表しています。どんな値が出るか(0, 1, 2)とそれぞれの確率が揃えば、確率変数の振る舞いが完全に決まります。この「各値 → 確率」の対応関係に名前をつけたものが確率質量関数(PMF: Probability Mass Function)です。PMFが満たすべき条件は「すべての確率を足すと1になること」(起こりうるすべての場合を足せば必ず1になる): ✓。

試験ポイント:PMFの条件は「すべての確率の合計 = 1」。問題で確率の表が与えられたとき、まずこの条件を確認しましょう。


2. 期待値と分散

期待値:長い目で見たときの平均

「くじを引くと1等(1000円)が10%、2等(100円)が30%、はずれ(0円)が60%」という場面を想像してください。このくじを何度も引いたとき、1回あたり平均でいくら当たるでしょうか?

1000回引いた場合:1等が100回(合計10万円)、2等が300回(合計3万円)、はずれが600回(0円)です。平均は 13万円 ÷ 1000回 = 130円になります。

これを確率を使って一発で計算するのが期待値(expected value) です:

一般式:(各値に確率を掛けて全部足す)。

コイン2回の例(上の表を使う):。「コインを2回投げれば、平均で1回表が出る」という直感と一致します。

分散:期待値からのズレの大きさ

期待値が「平均的にどの値になるか(分布の重心)」を表すなら、分散(variance) は「その重心からどれくらいばらつくか」を表します。「各値と期待値の差の二乗」を確率で重みをつけて平均したものです。

差を二乗するのは、プラスとマイナスのズレがそのまま足し合わさると打ち消し合ってしまうのを防ぐためです(「データの整理と要約」で学んだ標準偏差と同じ理由)。

コイン2回の例():

標準偏差は分散の平方根:。これは「コインを2回投げたとき、表の回数は平均1回から典型的に約0.71回程度ずれる」という意味です。

試験ポイント:期待値 = 「値 × 確率」の和。分散 = 「(値 − 期待値)² × 確率」の和。計算の順序を間違えないよう注意しましょう。


3. 確率変数の一次変換: の期待値・分散

確率変数 に対して、「全員の点数に10点足す」「単位をキロからトンに変換する(1000で割る)」のように、定数倍してから定数を足す操作を考えます。これを という一次変換と呼びます。このとき、新しい確率変数 の期待値・分散は、 の期待値・分散から次の公式で直接求められます。

なぜこうなるか(直感):

  • 期待値は「平行移動」も「拡大」もそのまま追いかける。 全員の点数に を足せば、平均点も同じだけ 上がります。全員の値を 倍すれば、平均も 倍になります。だから です。
  • 分散は「平行移動」の影響を受けません。 を足す操作は、すべての値を同じ方向・同じ量だけずらすだけなので、値どうしの「散らばり具合」は変わりません(分散に は登場しません)。
  • 分散は「拡大」の影響を2乗で受ける。 倍すると、期待値からの距離(ズレ)も 倍になります。分散はズレを2乗してから平均するので、 倍のズレは2乗されて 倍になります。

具体例: コイン2回の表の回数 (前の例で 、 と求めました)について、 の期待値と分散を求めてみましょう。

この公式がつながる先: 「連続型確率分布」モジュールで学ぶ標準化 は、実はこの一次変換の特別な形です(、 として上の公式に当てはめると、・ になることが導けます)。標準化がなぜ「平均0・分散1」になるのか、その裏付けがこの一次変換の公式です。

試験ポイント:分散の公式は であって、 ではありません。**(平行移動)は分散に一切影響しない**点が頻出の引っかけです。


4. 二項分布の確率計算

「コイン3回投げて、表がちょうど2回出る確率は?」この問いに答えるのが二項分布です。3ステップで積み上げて考えましょう。

Step 1:1通りの並びの確率

「表・表・裏(HHT)」という特定の並びの確率を求めます。コイン投げは毎回独立(前の結果が次に影響しない)なので、掛け算で求めます:

一般に、表の確率を 、裏の確率を とすると、「表が 回・裏が 回の特定の並び」の確率は です。

Step 2:並び方の数を数える

「表が2回」になる並びは HHT・HTH・THH の 3通り。この「 回のうち 回が表になる組み合わせの数」を で表します。

  • 3回中2回表:HHT・HTH・THH( 通り)
  • 4回中2回表:HHTT・HTHT・HTTH・THHT・THTH・TTHH( 通り)
  • 5回中3回表:( 通り)

()。試験では の値が与えられることが多いので、「特定の 回を選ぶ場合の数」という意味を理解しておけば十分です。

Step 3:足し合わせる

HHT・HTH・THH の3通りは同時には起こらない(排反)ので、それぞれの確率を足し合わせます:

Step1より各並びの確率はすべて で等しいので、3回足すことは3倍するのと同じです:

一般式:二項分布の確率質量関数

この考え方を一般化すると、「成功確率 の試行を 回繰り返し、成功回数がちょうど 回」の確率は:

この確率分布を**二項分布 ** といいます。


5. 二項分布の期待値と分散

確率の計算ができたところで、次はこの分布の「平均」と「ばらつき」を求めましょう。

**なぜ期待値が になるのか**

3つのステップで考えます。

  • 1回の試行(成功=1, 失敗=0)の期待成功数は です。
  • 回繰り返すと、合計の期待値は「 を 回足した値」、つまり です。
  • 分散も同様に、独立な試行では各回の分散が足し合わさり となります。
  • **期待値 **:公式 (例:)
  • **分散 **:公式 (例:)
  • 標準偏差:公式 (例:)

注意:標準偏差は分散の平方根です。 の標準偏差は ではなく です。

試験ポイント:二項分布の問題では、(試行回数)と (1回の成功確率)を読み取り、期待値 、分散 を計算しましょう。


よくある誤解・つまずき

  • PMF(確率質量関数)は「全確率の合計が1」が大前提。 表が与えられたらまず合計が1か確認します。
  • **二項分布では「並びの数」 を掛け忘れないこと。** 特定の並びの確率 だけでなく、その並びが何通りあるか()を掛けます。
  • 標準偏差は分散の平方根です。 の分散は ですが、標準偏差は 。
  • 期待値と分散の式の順序に注意。 期待値=「値 × 確率」の和、分散=「(値 − 期待値)² × 確率」の和。
  • **一次変換 は であって ではありません。** 平行移動の は分散に一切登場しない点が頻出の引っかけです。

ここまでのまとめ

  • 離散型確率変数は PMF(各値→確率、合計1)で完全に決まる。
  • 期待値 、分散 。
  • 一次変換 、。平行移動()は分散に影響しません。
  • **二項分布 **:。
  • 二項分布の **、、標準偏差 **。

確認クイズ(抜粋)

Q1. 二項分布 B(n, p) の期待値として正しいのはどれか。

A. np

Q2. 二項分布 B(n, p) の分散として正しいのはどれか。

A. np(1−p)

Q3. コインを5回投げて表が3回出る確率はいくつか(p=1/2)。

A. 5/16

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