現代の北マケドニア共和国と国名問題
20世紀、この地に一つの独立国が生まれた。しかし「マケドニア」という国名は、隣国ギリシャとのあいだに長い外交の問題を残しました。
独立と国名問題
第二次世界大戦後、マケドニアの地はユーゴスラビア連邦を構成する共和国の一つとなりました。1991年に連邦が解体するなかで、この共和国は独立を宣言しました。大きな武力衝突をともなわない、比較的おだやかな独立だったとされています。
しかし新しい国が名乗った「マケドニア共和国」という国名は、ギリシャとの外交問題を引き起こしました。ギリシャには同じ名を持つ地方があり、古代マケドニアの遺産をめぐる立場の違いもあって、両国は長く対立しました。この対立は、外交の場だけでなく、北マケドニアが国際社会に加わっていくうえでも、長く足かせとなりました。
旗と象徴をめぐる対立
対立は、国名だけにとどまりませんでした。象徴をめぐっても両国はぶつかりました。
独立した共和国は、赤地に黄色い星をあしらった国旗を定めました。この星は、ヴェルギナの王墓から見つかった納骨箱の意匠、アルゲアス朝の象徴とされる十六条の星(ヴェルギナの星)でした。ギリシャは、これを古代ギリシャ世界の文化遺産とみなしており、隣国がそれを国旗に用いることに強く反発しました。
この対立は、1995年9月13日にニューヨークで署名された暫定合意で動きました。合意の本文は、共和国が発効とともに、それまで国旗に掲げていた象徴を用いるのをやめると定めています(第7条2項)。その象徴が何を指すのかは、同じ日にギリシャの外相が国連の特使に宛てた書簡で、ヴェルギナの太陽(星)であると確認されました。あわせて共和国は、憲法のどの条文も現在の国境の外に領土を求める根拠にはならないと宣言しました(第6条1項)。人と物の移動をたがいに妨げないことも定められ(第8条)、ギリシャの経済封鎖は解かれました。合意は署名から30日後に発効し(第23条1項)、赤地の旗は、現在の、様式化された太陽をあしらった旗に改められました。国名そのものの問題は、国連の仲介のもとで交渉を続けることとされ(第5条)、解決は二十年あまり先に持ち越されました。
プレスパ合意と改称
この問題は、2018年に両国が結んだプレスパ合意によって解決へ向かった。合意は2018年6月17日に署名され、国際連合の仲介のもとで進められた。
合意は2019年2月12日に発効し、国名は「北マケドニア共和国」へと改められた。改称については国内でも賛否が分かれたが、合意は予定どおり発効しました。これを受けてギリシャは反対の姿勢を解き、北マケドニアは2020年3月27日に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国となりました。ヨーロッパ連合(EU)への加盟に向けた歩みも続いています。
合意が決めたのは、国名の表記だけではありません。条文は、正式の国名を「北マケドニア共和国」、略称を「北マケドニア」とし、これを相手国との関係にかぎらずすべての場面で用いること、国民の呼び方、公用語の呼び方までを一つずつ定めている(第1条3項)。また、1995年の暫定合意は、この合意の発効をもって終わるとされた(第1条1項)。
さらに合意は、このサイトが扱ってきた問いそのものにも触れています。第7条で両国は、「マケドニア」「マケドニア人」という語について、たがいの理解が異なることを認め合いました。ギリシャにとってこの語は、自国北部の地域と住民、そして古代から今日までのその地のヘレニズム的な歴史・文化・遺産を指します。北マケドニアにとっては、自国の領域・言語・住民と、その歴史や文化を指し、前者とは明確に異なるものとされました。公用語のマケドニア語が南スラブ語群に属し、古代ギリシャの文明や、ギリシャ北部の歴史・文化とは結びつかないことも、あわせて確認されています(第7条4項)。古代マケドニア王国と現代の北マケドニアはどういう関係なのかという問いに、当事国どうしが条約というかたちで出した答えが、これです。
国土と社会
北マケドニアは、セルビア、コソボ、ブルガリア、ギリシャ、アルバニアに囲まれた内陸の国です。
現代の北マケドニア共和国と近隣国の位置図(北が上)。内陸のこの国は、北のセルビアとコソボ、東のブルガリア、南のギリシャ、西のアルバニアに囲まれています。金の点が首都スコピエ、南西の青い点が世界遺産のオフリド湖。国境は Natural Earth のデータに基づきます。
国土は山がちで、中央をヴァルダル川が北から南へと流れています。南西部には世界遺産に登録されたオフリド湖があり、古い町並みとともに知られています。最も高い山はコラプ山で、標高はおよそ2,764メートルです。首都スコピエは国の北部、ヴァルダル川ぞいに位置し、政治と経済の中心となっています。住民の多くはマケドニア語を話すが、アルバニア語を話す人々も多く、複数の言語と文化が共に暮らす国です。2020年のNATO加盟に続いて、ヨーロッパ連合への加盟に向けた歩みも続いています。
| 項目 | 情報(目安) |
|---|---|
| 首都 | スコピエ |
| 面積 | 約25,713平方キロメートル |
| 人口 | およそ180万人 |
| 住民 | マケドニア人が多数、アルバニア人が最も大きな少数民族 |
人口や民族の割合などの統計は、調査の年や資料によって変わります。最新の数値は、各国政府や国際機関の公表資料でご確認ください。