不法行為と製造物責任(PL法)
不法行為の5要件・使用者責任・PL法の無過失責任・損害賠償の消滅時効を学びます。
不法行為とは何か
信号無視の車に突っ込まれてケガをした。加害者とは何の契約もありません。それでも損害賠償を請求できるのはなぜか。契約なしでも損害賠償が成立する、それが不法行為(民法第709条)の仕組みです。
契約責任(債務不履行)が「約束を破った場合」の救済であるのに対し、不法行為責任は「契約関係のない第三者から損害を受けた場合」の救済です。ビジネスでは取引先だけでなく、部外者・通行人・競合他社との間でも生じえます。
不法行為の成立要件(5要件)
不法行為で損害賠償を請求するには、5つの要件すべてを証明しなければなりません。
不法行為が成立するには以下の5つの要件すべてが必要です。被害者側が立証します。
「相当因果関係」とは:その行為から通常そのような結果が生じることが社会一般的に予測できる、という関係です。「脇見運転→事故→ケガ」は相当ですが、「脇見運転→事故→たまたまそのとき地震→家が倒壊」という連鎖は相当因果関係が切断されます。
過失相殺:被害者にも落ち度があったら
ただし、被害者にも落ち度がある場合、全額を加害者に請求できるわけではありません。
被害者にも落ち度(過失)があった場合、裁判所は損害額を過失割合に応じて減額します(過失相殺、民法第722条第2項)。
例:交通事故で加害者7割・被害者3割の過失がある場合、100万円の損害なら被害者が受け取れるのは70万円です。「お互い様」の部分は差し引かれます。
使用者責任(民法第715条)
個人の不法行為を確認したところで、ビジネスで特に重要な「会社が社員の行為について責任を負う」場面を見ましょう。
配達中のドライバーが人身事故を起こした。加害者はドライバー個人だが、使用者(運送会社)も連帯して賠償責任を負います。これが使用者責任です。
成立要件:
使用関係がある(雇用・派遣・請負など)
「事業の執行について」損害を与えた(業務時間外・私用運転は原則対象外)
免責: 使用者が被用者の選任・監督について「相当の注意」をした場合は責任を免れます。ただし、この免責が認められることは実務上非常にまれです。つまり会社は原則として責任を負うと理解しておく方が安全です。
製造物責任法(PL法: Product Liability)
使用者責任を踏まえて、次は「製品の欠陥」による被害に特化した製造物責任法(PL法)を見ましょう。
電子レンジが突然発火して火傷を負った。このとき被害者が「製造業者の設計・製造プロセスのどこが悪かったか」を証明するのは事実上不可能です。
そこでPL法は「製品に欠陥があったことを証明すれば足り、製造業者の過失(不注意)を証明しなくてよい」という無過失責任を定めています。
「欠陥」の3類型:
製造上の欠陥:設計どおりに作られなかった(異物混入、部品の取り付けミス等)
設計上の欠陥:設計自体に問題があった(構造的に安全性を欠く)
指示・警告上の欠陥:危険性の表示・説明が不十分だった(「子どもの手の届かない場所に保管」の記載漏れ等)
開発危険の抗弁: 製品を引き渡した時点では科学・技術の知見では欠陥を認識できなかったと証明できれば、製造業者は免責されます。
消滅時効:
被害者が損害および製造業者を知った時から3年
製造物を引き渡した時から10年(生命・身体侵害は20年)
不法行為の消滅時効まとめ
PL法の時効と合わせて、通常の不法行為の時効を整理しましょう。
確認クイズ(抜粋)
Q1. 不法行為(民法第709条)の成立要件として含まれないものはどれか。
A. 加害者と被害者の間の契約関係
Q2. 使用者責任(民法第715条)が認められる要件として正しいものはどれか。
A. 被用者が事業の執行について第三者に損害を与えた場合
Q3. 製造物責任法(PL法)の特徴として最も適切なものはどれか。
A. 製品の欠陥を証明すれば製造業者の過失の立証なしに損害賠償を請求できる
全10問のクイズはサイトのインタラクティブ版でお試しください。
同じChapterの他のモジュール
※本サイトは個人による学習支援サイトであり、東京商工会議所の公式サイトではありません。