ストレスの仕組みとストレス反応
ストレッサー・ストレス反応・一般適応症候群など、ストレスのメカニズムを学びます。
このモジュールで学ぶこと
前のChapterでメンタルヘルスケアの「枠組み」を学びました。では、そもそも「ストレス」とはどういうメカニズムで起きるのでしょうか?——このモジュールでは、ストレスの定義・発生の仕組み・身体への影響を学びます。仕組みを理解することが、気づきと対処の第一歩です。
ストレスとは何か
「同じ仕事量なのに、Aさんはケロっとしているのに、Bさんは追い詰められている」——職場でこんな場面を見たことはありませんか?原因(仕事量)が同じなのに、反応がまったく異なる。これがストレスの本質的な謎です。
ストレスとは単に「大変な状況」ではなく、ストレッサー(原因となる外部の刺激)が、個人の認知的評価(受け取り方)を経て、ストレス反応(身体・心理・行動の変化)を引き起こすまでの一連のプロセスです。
ストレッサー(原因)→ 認知的評価(個人の受け取り方)→ ストレス反応(結果)
この図式が示す通り、AさんとBさんの差は「ストレッサーの強さ」ではなく、「認知的評価の違い」にあります。同じ出来事でも「これは自分にとって脅威か?」という受け取り方が個人差を生むのです。
ストレッサーの種類
ストレスのメカニズムがわかりました。では、ストレッサーにはどんな種類があるのでしょうか?——職場では特に「目に見えないストレッサー」が重要です。
ストレッサーは大きく3種類に分けられます。
物理的・環境的ストレッサー
騒音・温度・照明・振動など、物理的な環境要因。オフィスの暑さや騒がしさも立派なストレッサーです。
化学的・生物的ストレッサー
薬物・アルコール・感染症など。
心理・社会的ストレッサー
職場では最も重要なカテゴリです。
仕事の量的・質的負荷:過重労働、スキル以上の責任
役割の曖昧さ・役割葛藤:何をすべきか不明確、相反する要求
対人関係:上司・同僚・顧客との摩擦
キャリア・昇進に関する問題:評価への不満、将来への不安
組織の風土:意見を言いにくい、変化が多すぎる
試験ポイント: 職場のストレス評価には職業性ストレス簡易調査票(57項目)や、仕事の要求度・コントロール・サポートの3要素で評価するJDCモデルがあります。詳細はChapter 4で学びます。
ストレス反応の種類
ストレッサーにさらされると、身体はどう反応するのでしょうか?——「なんとなく調子が悪い」と感じる背景には、3つの側面からのサインが隠れています。
身体的反応
頭痛、肩こり、胃痛・消化器症状、不眠、疲労感、動悸、発汗
心理的反応
不安・焦り、抑うつ感、集中力・記憶力の低下、感情の不安定さ、イライラ
行動的反応
遅刻・欠勤の増加、アルコール・タバコの量が増える、作業ミスの増加、コミュニケーションの回避
注意: ストレス反応は本人が気づかないまま進行することがあります。「なんとなく調子が悪い」という段階でサインに気づくことがセルフケアの核心です。
一般適応症候群(GAS)
「頑張れば乗り越えられる」——でもその「頑張り続ける」状態が、実は身体を蝕んでいることがあります。これを科学的に示したのが一般適応症候群(GAS: General Adaptation Syndrome)です。
カナダの生理学者ハンス・セリエは、様々なストレッサーに対して身体が示す反応のパターンを3段階で説明しました。
第1段階:警告反応期
ストレッサーに最初にさらされた時期。初期のショック相(防御機能が一時的に低下)と、それへの対抗としての反ショック相(防御機能の急上昇)があります。
第2段階:抵抗期
外見上は安定しているように見えるが、内部では対処のためにエネルギーを消耗し続けている時期です。「あの人は大丈夫そう」と見えても、実は限界に近づいているかもしれません。
第3段階:疲憊期
適応のためのエネルギーが枯渇し、身体機能が低下する時期。疾患の発症につながります。
試験ポイント: 3段階の名前と特徴、特に「抵抗期は外見上安定しているが内部消耗が続く」という点は頻出です。
認知的評価とストレス
GASを見ると「ストレスは身体を壊す」と怖くなるかもしれません。しかし重要なのは、同じストレッサーでも「どう受け取るか」によって反応が変わるという点です——これが認知的評価の考え方です。
ラザルスとフォークマンは、ストレスを「個人がある状況を、自分の資源を超えていると評価した際に生じる」ものとして定義しました。
一次的評価:「このストレッサーは自分にとって脅威か?」という評価
二次的評価:「自分にはこれに対処する能力・資源があるか?」という評価
同じ仕事量でも、自信がある人はプレッシャーをやりがいに変え、自信がない人は強いストレス反応を示します。この認知の違いを理解することが、自分のストレス反応をコントロールする第一歩です。
確認クイズ(抜粋)
Q1. ストレッサーの説明として最も適切なものはどれか。
A. ストレスを引き起こす原因となる外部からの刺激や要因
Q2. 一般適応症候群(GAS)の3段階を正しい順番に並べたものはどれか。
A. 警告反応期 → 抵抗期 → 疲憊期
Q3. 一般適応症候群の「抵抗期」の特徴として最も正しいものはどれか。
A. ストレッサーへの適応が外見上安定しているが、内部ではエネルギーを消耗している時期
全10問のクイズはサイトのインタラクティブ版でお試しください。
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