地域で違う干満差|有明海はなぜ大きく日本海はなぜ小さいか

最終更新: 2026年7月23日

起潮力は地球全体になだらかに働きますが、実際の干満差は場所によって大きく違います。海の地形や深さ、湾の共振が、潮の大きさを左右します。

干満差は場所で大きく違う

同じ日の同じ大潮でも、干満差は海域によって大きく異なります。海上保安庁などの資料をもとにした目安は次のとおりです。

海域干満差の目安
有明海(九州)最大で約6m(国内最大)
太平洋側約2m
日本海側約0.4m(30〜40cm程度)

干満差が大きい海では、潮が引くと広い干潟が現れ、満ちると一気に水がもどってきます。逆に干満差の小さい海では、一日を通して海面の高さがあまり変わりません。同じ「海」でも、面している場所によって表情はまるで違います。こうした地域ごとの違いは、船の運航や港の設計、防災の計画などでも考慮されています。

有明海が大きい理由

有明海は、国内で最も干満差が大きくなっています。海上保安庁の解説によれば、細長い湾が持つ固有の振動の周期が、外海から入ってくる潮の波の周期に近いため、湾の中で潮の動きが共振して増幅されます。さらに湾の奥ほど浅くなっていくため、潮の波が上へ押し上げられ、干満差がいっそう大きくなります。

湾の形は、干満差に細かく効いてきます。有明海では、湾を締め切る工事のあとに湾の固有の周期が変わり、潮の動きに影響が出たとする報告もあります。地形のわずかな違いが、潮の大きさを左右することがうかがえます。

世界でいちばん大きい干満差

湾の形と共振が干満差を大きくするしくみは、日本の外でも同じように働きます。世界でもっとも干満差が大きいとされるのは、カナダの大西洋岸にあるファンディ湾です。百科事典の記述によれば、湾の奥では、干潮と満潮の差がおよそ十五メートル、出典によっては二十メートル近くに達します。

この大きさも、有明海と同じように、湾がもつ固有のゆれの周期が潮の満ち引きの周期に近く、湾の中で潮の動きが共鳴して増幅されるためと考えられています。日本の内海で起きているのと同じしくみが、けたはずれの規模で現れているといえます。ビルの数階分にあたる高さの海面が、半日ほどで上下することになります。

日本海が小さい理由

日本海側の干満差は小さくなっています。日本海は、対馬海峡や津軽海峡など、狭く浅い海峡を通してしか外の海とつながっていない、半ば閉じた海です。外から潮の波が入りにくく、海そのものの水の量に対して出入りが限られるため、干満差は大潮でも数十センチにとどまります。干満差が小さいと、大きく潮が引く潮干狩りはしにくくなります。同じ日本でも、面している海によって潮とのつき合い方は変わってきます。

潮の高さと潮の流れは別

ここまでは、海面が上下する大きさ(干満差)を見てきました。これとは別に、潮の満ち引きにともなって海水が水平に動く流れを潮流(ちょうりゅう)といいます。干満差が大きいことと、潮流が速いことは、同じではありません。

潮流がとくに速くなるのは、広い海どうしをつなぐ狭い海峡です。両側の海で潮の満ち引きに時間差や高さの差があると、その差をならすように、狭い口を大量の海水が一気に通り抜けます。瀬戸内海は、こうした狭い海峡がいくつもあり、潮流の速い海として知られています。海上保安庁は、鳴門海峡や来島海峡、備讃瀬戸などの潮流を予報として公開しています。潮の速い海峡は船にとって難所であり、通航には潮流の時刻が欠かせません。

鳴門の渦潮

潮流の速さが生む見どころが、鳴門海峡の渦潮です。海上保安庁の解説によれば、鳴門海峡は瀬戸内海と太平洋側の紀伊水道を結ぶ幅およそ400メートルの狭い水道で、潮流は最大でおよそ11ノット(時速にして約20キロメートル)に達します。

渦ができるのは、海峡をはさむ瀬戸内海側と太平洋側とで、潮の満ち引きの時刻や高さが違うためです。潮位の高い側から低い側へ、狭い海峡を海水が高速で流れ込み、速い流れとまわりのゆるやかな流れとの境目に渦が生まれます。潮位差が大きくなる大潮のころには、渦もいっそう大きくなります。狭い場所ほど潮が速く流れるという性質が、目に見える形になったものといえます。

理論と実際のずれ

月が真南に来た瞬間に満潮になる、という単純な理論(平衡潮汐論)は、潮汐の入り口としては分かりやすいものです。しかし実際には、海水が動くのに時間がかかるため、月の南中から満潮までには数時間のずれが生じます。海の深さや地形によって、このずれの大きさも場所ごとに変わります。潮が最も大きく引くのはいつか、満ちるのはいつかも、こうした海の事情によって場所ごとに違ってきます。だからこそ、実際の満干の時刻は場所ごとの潮汐表で確かめる必要があります。

← トップへ戻る