亀戸大根|江戸東京野菜・日本一小さい白い大根
亀戸の名物は、和菓子だけではありません。香取神社の周辺で育てられてきた「亀戸大根」は、いまや希少な江戸東京野菜のひとつ。小ぶりで真っ白な、この土地ならではの大根の歴史と特徴を紹介します。
江戸東京野菜「亀戸大根」とは
亀戸大根は、JA東京中央会の「江戸東京野菜」に登録されている在来の野菜です。江戸東京野菜とは、江戸から東京へと受け継がれてきた、地域に根ざした伝統的な野菜のことです。
JA東京中央会の資料によれば、亀戸大根の栽培は文久年間(1860〜1864年ごろ)から、亀戸香取神社の周辺で始まったとされ、昭和の初めごろまでさかんに作られていた記録が残っています。
名前の移り変わり
亀戸大根は、はじめから「亀戸大根」と呼ばれていたわけではありません。
| 時期 | 呼び名 |
|---|---|
| 明治のころ | おかめ大根・お多福大根(おたふくだいこん) |
| 大正の初め | 産地の名をとって「亀戸大根」 |
ふっくらとした形を、おかめ(お多福)の顔に見立てた愛らしい呼び名が、やがて産地の名前へと変わっていきました。
亀戸大根の特徴
亀戸大根は、現代のスーパーで見かける大きな大根とはずいぶん姿が違います。JA東京中央会・農林水産省の資料によれば、おもな特徴は次のとおりです。
- 小ぶり:根の長さは約30cm、重さは200g足らずで、「日本一小さい大根」とも呼ばれます。
- 茎が白い:葉のつけ根(茎)まで白いのが大きな特徴です。
- 葉がやわらかくトゲがない:葉もやわらかく、漬物などに利用されてきました。
亀戸大根と一般的な青首大根の比較(模式図)。亀戸大根は長さ約30cmと小ぶりで、首まで白いのが特徴です。一般的な青首大根は大ぶりで、上部が緑色になります。寸法は目安です。
こうした特徴は、長い年月のあいだに在来種として選び抜かれ、受け継がれてきたものです。緻密でみずみずしい肉質は、煮物や浅漬けなどに向くとされています。
一般的な大根との比較
| 亀戸大根 | 一般的な青首大根 | |
|---|---|---|
| 長さ | 約30cm(小ぶり) | 35〜40cm前後 |
| 茎・首の色 | 白い | 上部が緑(青首) |
| 葉 | やわらかくトゲが少ない | 品種による |
| 位置づけ | 江戸東京野菜(在来種) | 現在の主力品種 |
数値はいずれも目安です。在来種は個体差が大きく、栽培される環境によっても変わります。
福分けまつりと保全
大正の終わりから昭和にかけて、亀戸一帯は宅地化・工業化が進み、大根を育てる畑は次第に姿を消していきました。現在、亀戸大根を出荷する生産者はごくわずかになっています。
在来種を守る生産者の取り組みは貴重なものですが、私人である生産者の実名や年齢などの個人情報は、本サイトでは扱いません。
いっぽうで、亀戸大根を地域の記憶として残す取り組みも続いています。毎年3月には、亀戸大根を亀戸香取神社に奉納する「福分けまつり」が開かれ、近隣の人々に親しまれています。在来の野菜を、まつりや学校での栽培を通じて次の世代へ伝えていく——そんな地域ぐるみの保全が、亀戸大根を今に生かしています。
まとめ
- 亀戸大根は文久年間に香取神社周辺で始まった江戸東京野菜
- 明治の「おかめ・お多福大根」から大正初めに「亀戸大根」へ
- 約30cmと小ぶりで茎まで白いのが特徴
- 3月の福分けまつり(香取神社)で奉納され、保全が続けられている