亀戸香取勝運商店街|平成につくられた「昭和30年代」の街並み

最終更新: 2026年9月21日

亀戸を歩くと、「昭和レトロ」を掲げる商店街に出会います。亀戸香取勝運商店街です。ただし、この街並みは実際に昭和から残っているものではありません。平成の時代につくられた「昭和」の景観です。

香取神社の参道から生まれた商店街

亀戸香取勝運商店街(香取大門通り会)は、亀戸香取神社の参道に由来する通りです。江東区観光協会の説明によれば、この通りは明治の頃から商店街として発展してきた、江東区で最も古い歴史を持つ商店街のひとつとされています。所在地は江東区亀戸3-61周辺、亀戸駅北口から徒歩5分の距離にあります。

平成23年、「昭和30年代」をつくる

長い歴史を持つ一方で、東京新聞の記事によれば、この商店街はかつてシャッターを閉めた店が増え、来街者が減る時期を経験しました。転機になったのが、東京都の商店街活性化補助金です。商店街の事務局を務める和菓子店「山長」の店主(三代目)らが知恵を絞り、平成23年(2011年)春、「昭和30年代」をコンセプトにした街並みへとリニューアルオープンしました。

東京新聞の記事は、この街並みを率直に「フェイク(偽物)」の街と表現しています。つまり、建物そのものが昭和30年代から残っているわけではなく、当時の雰囲気を再現するために、平成になってつくり直されたものです。古い映画のセットのような郷愁を演出することで、商店街への来街者を呼び戻すねらいがあったと記事は伝えています。

看板建築というデザイン

商店街の外観が手本にしたのは、「看板建築」と呼ばれる建築様式です。これは大正12年(1923年)の関東大震災以後から昭和初期にかけて、個人商店を中心に流行した様式で、建物の正面を平らな壁面にし、モルタルや銅板などで装飾するのが特徴です。

19001925195019752000商店街として発展(明治の頃から現在まで)看板建築の流行(1923年〜昭和初期)手本にした「昭和30年代」(1955〜64年)2011年 リニューアルで街並みを新築手本の時代から約50〜90年あとにつくられた再現

香取勝運商店街の時間の位置関係(模式図)。商店街としては明治の頃からの歴史がありますが、手本にした看板建築は1923年(大正12年)以後から昭和初期の流行、コンセプトの「昭和30年代」は1955〜64年で、街並みそのものは2011年(平成23年)につくられた再現です。

亀戸香取勝運商店街では、各店舗のデザイン自体は自由にしながら、通りにかかる看板や街灯、ベンチ、プランターといった小物のデザインと色を統一することで、商店街全体としての「昭和」らしい統一感をつくり出しています。

演出された昭和と、本当に昔から続く店

商店街の建物の見た目は平成につくられたものですが、そこに軒を連ねる店の中には、リニューアルより前からこの地で商いを続けてきた老舗もあります。事務局を務める和菓子店「山長」の店主が三代目であることは、その一例です。

見た目の「昭和レトロ」と、実際に昔から続く老舗とは、必ずしも同じではありません。この違いは、浮世絵の記事で紹介した「梅屋敷」にも通じる話です。広重が描いた江戸時代の梅園「梅屋敷」はすでに現存せず、今ある観光施設「亀戸梅屋敷」は平成25年(2013年)に開館した、まったく別のものでした(見どころ・めぐり方のページも参照)。亀戸には、こうして「かつての姿を今に再現したもの」と「かつてから変わらず続いているもの」が、混ざり合って残っています。

香取勝運・天神通り・十三間通り、三つの商店街

亀戸駅の周辺には、性格の異なる商店街が並んでいます。江東区観光協会の説明にもとづいて比べると、それぞれの違いがよく分かります。

商店街参道・立地特徴
亀戸香取勝運商店街香取神社の参道(北口)平成23年(2011年)に看板建築で「昭和30年代」を再現
亀戸天神通り商店街天神社の参道(北口)演出は無く、煎餅・饅頭・くず餅など老舗の和菓子店が並ぶ門前町
亀戸十三間通商店街明治通り沿い(北口)老舗店から流行の店舗までが揃い、日曜日は歩行者天国でにぎわう

天神通り商店街は、香取勝運商店街のような平成のリニューアルを経ておらず、江東区観光協会の説明でも「天神様の門前商店街」として、演出のない門前町の姿がそのまま紹介されています。同じ「神社の参道の商店街」でも、片方は「昭和」を演出し、もう片方は演出のない老舗が並ぶ。この違いを知っていると、亀戸の二つの参道歩きが、いっそう楽しめます。

十三間通商店街は、神社の参道ではなく、明治通り沿いに自然と育った商店街です。テレビ東京の情報番組(2002年11月30日放送)は、この商店街について「戦前から商店はあったそうで、戦後商店街となりました」と紹介しており、加盟店の一例として、昭和25年(1950年)創業のレコード店が挙げられています。

「◯年の歴史」という具体的な年数を掲げるウェブサイトも見かけますが、本サイトで確認できた範囲では、商店街としての正確な発足年を確定できる公的な記録は見つかりませんでした。ここでは「戦前からの商店が、戦後に商店街として組織化された」という大枠のみを、確認できた事実として紹介します。

まとめ

  • 亀戸香取勝運商店街は香取神社の参道に由来し、明治の頃から発展してきた商店街
  • 平成23年(2011年)、東京都の補助金を活用し、「昭和30年代」をコンセプトにした看板建築の街並みへリニューアルされた
  • 東京新聞はこの街並みを「フェイク」と表現する。実際に昭和から残る建物ではなく、平成につくられた再現である
  • 天神社の参道・天神通り商店街には演出が無く、老舗の和菓子店が並ぶ門前町の姿がそのまま残る
  • 商店街の見た目は平成のものだが、リニューアル前から商いを続ける老舗も軒を連ねている

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