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幾何・負の二項・多項分布:待ち回数と多択の分布

成功するまでに何回かかるか、結果が3種類以上あるときそれぞれ何回出たかを、二項分布を広げて学びます。

このモジュールで学ぶこと

前のモジュールのポアソン分布では、「一定の時間に何件起きるか」を数えました。このモジュールでは、二項分布を別の2つの方向に広げます。

  • 成功するまでに何回かかるか:1回目の成功までなら幾何分布、 回目の成功までなら負の二項分布
  • 結果が3種類以上あるとき、それぞれ何回出たか:多項分布

どちらも、1回ごとの確率が決まっていて、各回が互いに影響しない試行を繰り返す場面です。


1. 幾何分布・負の二項分布

サイコロを振り続けて、初めて6が出るのは何回目でしょうか。1回目で出ることもあれば、10回振っても出ないこともあります。

この「初めて成功するまでの回数」を表すのが幾何分布(Geometric Distribution)です。前提は、1回ごとの成功確率が で、各回が互いに影響しない試行(離散分布の基礎で学んだベルヌーイ試行)を繰り返すことです。

「 回目に初めて成功する」とは、最初の 回がすべて失敗し(各回の確率 )、 回目に成功する(確率 )ことです。各回は互いに影響しないので、確率を掛け合わせます。

サイコロ()なら、1回目で6が出る確率は 、2回目で初めて出る確率は 、3回目は です。1回ごとに 倍ずつ小さくなっていきます。

15101520 平均 1/p = 6 回目 1回目 0.17 灰色(11回目以降)の合計 0.16 横軸 k(初めて6が出る回)/高さ = P(X = k)
サイコロで初めて6が出る回の分布(p = 1/6)です。いちばん起こりやすいのは1回目(0.17)で、そこから1回ごとに 5/6 倍ずつ低くなり、右へ長い裾を引きます。平均は6回目ですが、山の頂上は1回目にあり、10回振っても6が出ない確率(灰色の棒の合計。表示した20回目より先も含む)も 0.16(約16%)あります。

期待値と分散は次のとおりです。

サイコロなら、初めて6が出るのは平均して 回目です。成功しにくい( が小さい)ほど、待つ回数の平均もばらつきも大きくなります。

教科書によっては、「初めて成功するまでに何回失敗したか」(成功の回は数えない)を とすることがあります。その場合 は0から始まり、、期待値は と1だけ小さくなります。問題文がどちらで数えているかを確かめてください。

無記憶性:これまでの失敗は、この先に影響しない

「 回振っても6が出ない」確率は、 回続けて失敗する確率なので です。これを使うと、すでに 回失敗したという条件のもとで、さらに 回失敗する確率は

となり、最初から 回失敗する確率と同じです。この性質を無記憶性(Memoryless Property)と呼びます。

例えば、5回振ってまだ6が出ていないとします。そこから3回以内に6が出る確率は で、振り始めたときの「3回以内に出る確率」と変わりません。「これだけ外れたのだから、そろそろ出るはず」とはならないのです。

連続型の分布では、次のモジュール連続型分布の基礎で学ぶ指数分布(待ち時間を表す連続型の分布)が、同じ性質を持ちます。

負の二項分布: 回成功するまでの回数

幾何分布は「1回成功するまで」でした。これを「 回成功するまで」に広げたのが負の二項分布(Negative Binomial Distribution)です。 のときが幾何分布です。

「 回目にちょうど 回目の成功が来る」とは、最後の 回目が成功で、それより前の 回の中に成功がちょうど 回あることです。前の 回のどこで成功するかの選び方が 通りあるので、

( は のどれか)

例えばコインで表が3回出るまで投げるとき(、)、ちょうど5回目で終わる確率は です。

回成功するまでの回数は、「1回目の成功までの回数」「そこから2回目の成功までの回数」…と、幾何分布に従う待ち回数を 個足したものです。そのため期待値と分散は幾何分布のちょうど 倍になります。


2. 多項分布

二項分布は、1回の結果が「成功か失敗か」の2種類でした。結果が3種類以上ある場合に広げたのが多項分布(Multinomial Distribution)です。

工場の製品が、確率 0.7 で良品、0.2 で不良A、0.1 で不良Bになるとします。5個作ったとき、良品3個・不良A1個・不良B1個になる確率を考えます。

  • 「良品・良品・良品・不良A・不良B」という特定の順番で出る確率は
  • 5個の中で、どれが良品・不良A・不良Bになるかの並べ方は 通り

なので、求める確率は です。一般に、 種類の結果が確率 (合計1)で起きる試行を 回繰り返したとき、各結果が 回(合計 )出る確率は次の式です。

前の分数が並べ方の数、後ろが1つの並べ方の確率です。結果が2種類()なら、並べ方の数 は と同じになり、二項分布の式に戻ります。

1つの結果だけに注目すると、二項分布になります。例えば不良Aの個数だけを見れば、1個ごとに「不良Aか、それ以外か」の2択なので、 に従います。一般に で、期待値は 、分散は です。

別々の結果の個数どうしは、負の相関を持ちます。合計が 個に決まっているので、良品が多ければそのぶん不良は少なくなるからです。共分散(相関・偏相関・条件付き期待値で学びました)は ()です。

多項分布は、品質管理での良品・不良の種類別の個数や、アンケートの選択肢ごとの回答数、選挙の候補者ごとの得票数などに使われます。

確認クイズ(抜粋)

Q1. 幾何分布の「無記憶性」とはどういう性質か?

A. すでに何回失敗していても、そこから初めて成功するまでの残り回数の分布は、最初と同じ

Q2. コインを投げ続けて3回表が出るまでの試行回数の分布は何か?

A. 負の二項分布

Q3. 多項分布の各周辺分布はどの分布になるか?

A. 二項分布

全10問のクイズはサイトのインタラクティブ版でお試しください。

第2章の他のモジュール

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