ベータ・対数正規・コーシー分布:割合・掛け算・極端な値の分布
割合を表すベータ分布、掛け算で増える量を表す対数正規分布、期待値を持たないコーシー分布を学びます。
このモジュールで学ぶこと
指数分布とガンマ分布では、待ち時間の分布を学びました。このモジュールでは、待ち時間とは別の場面で使う連続型の分布を3つ学びます。
- ベータ分布:割合や確率(0から1の値)
- 対数正規分布:所得や株価のように掛け算で増える量(0より大きい値)
- コーシー分布:極端な値がよく出る量(すべての実数)
1. ベータ分布:割合の分布
広告のクリック率や選手の打率のように、0から1の間の値をとる量があります。こうした割合がどのあたりにありそうかを表すのがベータ分布 です。
分子の は、成功確率が のとき「成功 回、失敗 回」が起きる確率と同じ形です。 が大きいほど の大きい側が持ち上がり、山が右へ寄ります。
はベータ関数で、全体の面積を1にするための数です。前のモジュールで学んだガンマ関数を使うと と書けます。
期待値と分散は次のとおりです。
例えば の期待値は です。 では となり、0から1のどこも同じ高さの一様分布になります。
ベータ分布は、ベイズ推定で「成功確率がどのくらいの値でありそうか」を表す分布(事前分布)としてもよく使われます。
2. 対数正規分布:掛け算で増える量
所得や株価のように、0より大きく、一部がとても大きな値になる量があります。こうした量は、対数 をとると正規分布に従うことがよくあります。正規分布は、平均を中心に左右対称な釣鐘形の分布で、正規分布の性質で詳しく学びます。このときの の分布が対数正規分布 です。 と は、 ではなく の平均と分散です。
対数をとると正規分布になる理由は、掛け算にあります。株価が毎日「前の日の何倍か」で動くとすると、 日後の株価 は、最初の株価 に毎日の倍率 を掛けたものです。対数をとると、掛け算は足し算に変わります。
独立な量をたくさん足したものは正規分布に近づきます(中心極限定理。大数の法則と中心極限定理で学びます)。なので は正規分布に近く、 は対数正規分布に近くなります。
期待値と分散は次のとおりです。
、 で比べます。 の真ん中の値は0なので、 の真ん中の値(中央値)は です。一方、期待値は です。右に長い裾が平均を引っ張るので、平均は中央値より大きくなります。所得の平均が、真ん中の人の所得より高く出るのも同じ理由です。
3. コーシー分布:期待値を持たない分布
コーシー分布は、正規分布に似た左右対称の山の形をしていますが、裾がずっと重い分布です。標準的なコーシー分布の確率密度関数は次の式です。
が大きくなっても、密度は くらいの速さでしか小さくなりません。正規分布の よりずっと遅いので、極端な値がよく出ます。
この裾の重さのために、コーシー分布には期待値も分散もありません。期待値を計算する積分 が無限大になるからです。
参考積分が無限大になる理由読まなくても先へ進めます
が大きいところでは、 はほぼ です。 を積分すると になり、 を大きくするといくらでも大きくなるので、積分は収束しません。
期待値が無いので、大数の法則(データを増やすほど標本平均が母平均に近づく)も成り立ちません。コーシー分布に従う独立な 個の値の平均は、 をいくら増やしても、元と同じコーシー分布に従います。1万個の平均をとっても、1個だけ見たときと散らばり方が変わりません。
そのため、コーシー分布の真ん中を推定するときは、平均ではなく中央値を使います。
コーシー分布は、自由度1の 分布(標本分布の相互関係で学びます)と同じ分布です。また、標準正規分布に従う独立な2つの変数の比 も、コーシー分布に従います。
確認クイズ(抜粋)
Q1. に従う確率変数の期待値はいくらか?
A. 0.3
Q2. ベータ関数 の値はいくらか?
A.
Q3. ベータ分布 で、 を変えずに を大きくすると、分布の山はどうなるか?
A. 1に近い側へ寄る
全10問のクイズはサイトのインタラクティブ版でお試しください。
第3章の他のモジュール
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